

戦争に引き裂かれたひと組の夫婦の非情な運命――。
1970年、当時イタリアのみならず、世界的なスターとして名を馳せていたソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニ主演で大ヒットした『ひまわり』。3度のアカデミー賞、パルムドールを受賞しているイタリア映画界で最も重要視されている巨匠ヴィットリオ・デ・シーカの晩年の名作である。
ヘンリ・マンシーニの心に残る情緒的な音楽と、広大な丘一面に咲くひまわり畑に茫然とたたずむローレンの映像は、印象的で半世紀たった今でも色褪せることなく映画史に深く刻みこまれている。
日本では1980年にリバイバル上映され、話題を呼んだこの名作が、30年ぶりに35ミリフィルムでスクリーンに甦る!
第二次世界大戦前夜、お針子のジョヴァンナは、徴兵前のバカンスでナポリを訪れていたアントニオを出会い恋に落ちる。ふたりは絆を深めるため結婚するが、兵役を逃れるため仮病を装ったアントニオは、極寒のソ連の前線に送られてしまった。
終戦後もひたすら夫の帰りを待つジョヴァンナは、やがてソ連まで捜索に出かけるが、やっと探し当てたアントニオは、命を救ってくれたロシア人娘との間に子供をつくり、家庭を築いていた。逃げるようにイタリアの戻ったジョヴァンナ。数年後、もう一度やり直したいとジョヴァンナの元を訪ねたアントニオだが……。
戦争が、いとも簡単に破壊した幸福は決して元に戻ることはない。観るものの心を抉るような、ひとつの愛の悲劇を通じて、戦争の不条理さを訴えるこの作品は、人間ドラマであると同時に反戦映画の傑作でもある。

ソフィア・ローレン
1934年生まれ イタリア・ローマ出身
イタリアを代表するだけでなく、『黒い蘭』(1958年)で、ヴェネチア映画祭女優賞を受賞、『ふたりの女』(1961年度)でアカデミー賞主演女優賞や英国アカデミー主演女優賞を受賞するなど、世界各国で長年にわたり活躍を遂げている20世紀を代表する国際的女優。
50年代のデビュー当時は、グラマラスな肢体を生かしたセックスシンボル的な役が多かったが、55年『河の女』あたりから世界的にも名前が知られるようになり、57年にはハリウッドでもデビュー。演技力が評価されて以後は、喜びも悲しみも幅広く演じ分け、数々の名作に出演し、イタリアの太陽と言われるほどの存在になり男女問わず人気が高い。
日本のファンも多く、彼女自身も親日家としても知られ、最近では、2010年に「世界文化賞 演劇映像部門」での受賞で4度目の来日をしたことは記憶に新しい。
マルチェロ・マストロヤンニ
1924年生まれ1996年没 イタリア フォンターナ・リーリ出身
戦後はアマチュア劇団に入団し、映画の制作スタッフとしても働く。その後、フェデリコ・フェリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ヴィットリオ・デ・シーカ、ミケランジェロ・アントニオーニ、ジュゼッペ・トルナトーレなど優れた監督と組み多くの作品を残す。フェリーニ監督の『甘い生活』(1960)で世界的なスターになり、二枚目から三枚目まで人生の悲喜劇を巧みに演じ分けることのできるイタリアを代表する名優に成長した。ソフィア・ローレンとの共演も多く、本作の他に、デ・シーカ監督作『昨日・今日・明日』、『あゝ結婚』などがある。また、カトリーヌ・ドヌーヴとの恋愛は有名で、亡くなるときは、彼女と彼女の間に出来たキアラ・マストロヤンニが立ち会ったと言われている。ヴェネチア映画祭では3度の受賞歴があり、70年『ジェラシー』、87年『黒い瞳』でカンヌ映画祭男優賞を受賞。96年没。93年には来日も果たしている。没後10年となる2006年には彼の生涯を追ったドキュメンタリー映画『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』も公開された。
ヴィットリオ・デ・シーカ
1901年イタリア フロジノーネ生まれ 1974年没
幼少より演劇好きで舞台や映画などに出演し、俳優として活躍。1940年に映画監督としてデビューした。
第二次大戦後、ネオリアリズモの代表作となる『靴みがき』や『自転車泥棒』などを発表し、イタリアを代表する監督となる。『終着駅』『ふたりの女』をはじめ、ローレン、マストロヤンニと組んだ『あゝ結婚』『昨日・今日・明日』で優れた演出をみせた。多くの喜劇やドラマなど一貫して愛をテーマにした作品を送り出した。1951年『ミラノの奇跡』でカンヌ国際映画祭グランプリ、1971年の『悲しみの青春』でベルリン映画祭金熊賞を受賞するなど各映画祭で多数受賞。
ヘンリー・マンシーニ
1924年オハイオ州クリーブランド生まれ 1994年没
イタリア系アメリカ人として生まれたマンシーニは父親の影響で幼少よりフルートとピッコロの教育を受ける。ジュリアード音楽院に進むかたわらグレン・ミラー楽団のピアニスト兼アレンジャーとして参加する。1951年からハリウッドで働き始め、ユニバーサル映画の音楽担当として作曲や指揮を担当するようになる。同じユニバーサル映画で助監督をしていたブレイク・エドワーズのTVシリーズ「ピーター・ガン」の音楽を担当。これがきっかけで、後に『ティファニーで朝食を』『ピンク・パンサー』シリーズなどの名コンビにつながっていく。
『ティファニーで朝食を』(ムーン・リバー)では1961年のアカデミー主題歌賞と歌曲賞をダブル受賞。翌年の『酒とバラの日々』の主題歌もアカデミー賞歌曲賞を受賞、1982年に公開された『ビクター/ビクトリア』でも編曲・歌曲賞を受賞
なかでも『ひまわり』は作品のイメージを決定づけるほどの名曲で、今なおファンの間で人気が高い。